「たっだいまー」
帰って来たソラを出迎えるため玄関に向かう
最近は暑いため私はいつも涼しい屋内にいる
雪女だとかそういうのは関係ないんだと思うけど、とにかく私は暑いのが苦手
だから夏は嫌い
玄関を見るとちょうどソラが靴を脱いだ所だった
今日も土まみれ
きっと、クラスの男子たちとサッカーでもしてきたんだろう
ソラは誰とでも仲良くなる
ソラが他の誰かと仲良くなると不安になってくる
だから出来れば、一秒も離れたくない
「彩ちゃん、ただいま~」
「おかえりなさい…」
ソラの笑顔を見ているととても安心して、気持ちがほんわかする
封印の眠りから目覚めて、一人ぼっちで、何もわからなくて…
まるで雪に閉ざされた山の様だった私の世界
そんな世界を照らして雪を溶かしてくれたソラ
ソラが居なかったら、きっと私は春を知らないままさ迷い続けていただろう
「ママ、お風呂入るね~」
ソラは家の奥にそう声を投げた
ソラはお母さんの返事も聞かず風呂場へ駆けようとする
「あ、そうだ、彩ちゃんも入ろ?」
この言葉をかけられたのは何度目だろう
その度に私は、呼吸が苦しくなって頭の中がめちゃくちゃになってこの場に居られなくなる
ソラは「恥ずかしがりやさんだね」と言うけれど
たぶん、違う
顔を手で覆い、真っ赤にしながら自室に駆け込んだ
一緒にお風呂だなんて…はだか…2人で…
…興奮しすぎて鼻血が出た
ソラのことを思うと私は変になる
気持ちが高まりすぎて、コントロールが出来ないことさえある
この気持ちは、一体何だろう
分からない
病気かもしれない
気持ちを落ち着けて顔の筋肉を元に戻したら
ソラの着替えを風呂場に運ぶ
「着替え、ここ置くね」
「ありがとー」
理性があるうちにこの場を離れる
このあとは、気を紛らわせるためにソラのお母さんのお手伝いをした
ソラのお母さんは、とてものんびりしてる
ソラの性格は、お父さんに似たみたい
「彩香ちゃんいつもありがとう、はい」
ソラのお母さんの手作りのアイスクリームは好き
今日もお手伝いのご褒美にアイスクリームをもらって、黙々と食べる
「彩香ちゃんはお料理もお掃除も上手ね~」
それほどでもない
「これならいつ空のお嫁さんになっても大丈夫ね」
ブフッ
…動揺のあまり盛大に噴いた
「あら、大丈夫?」
お母さんが慌ててフキンを持ってくる
「ん…大丈夫…ちょっとむせた…」
ベタベタになった手を拭われるまま拭われた後、汚してごめんなさい、と謝ると
「ううん、私は大丈夫」
とお母さんは笑ってくれた
こういうときの笑顔はソラに似てると思う
「…あ、そうそう」
そう言いながらソラのお母さんは、手をぽんと合わせた
「今日は七夕だから笹を探して来たの」
と良い、冷蔵庫と食器棚の隙間から笹の入った袋を取り出した
「お夕飯を食べたら、みんなで短冊を書きましょうね」
七夕は笹ではなく竹だった気がするけど黙っておく
ソラがお風呂からあがってソラのお父さんが帰ってきたら
そのまま夜ご飯になって、食べ終わったら折り紙で短冊を作って
みんなで飾りをつけた
願い事は、少し迷ったけど
『ずっと一緒に居られますように』
ソラは『みんなとずっと一緒にいられますように』だった
『みんなと』が無かったら同じだったのに…残念
…でも、私も、出来ればみんなと一緒がもっと良いかも
ソラと会って始まった私の世界は
今はたくさんのいろんなモノで溢れてる
大事なこと、どうでもいいこと、たくさんあるけど
どれも無いと寂しいかも
だから、今のこの時代を大事にしたい
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空 -> 彩香 は家族だけど
彩香 -> 空 は家族以上の何かの感情です
余談ですが
アルフレッド -> 空 だと片思いですが
空 -> アルフレッド は幼馴染止まりです
がんばれアル、背後は君を応援している!(ワクワクした瞳で)
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