そのとき彩香がはじめに感じた感覚は「懐かしい」だった
同時に、封印の眠りにつく前の、思い出したくない記憶が一部フラッシュバックする
「……っ!?」
行き場のない怒りと悲しみと、湧き上がる破壊衝動
突然湧き上がるさまざまな感情に戸惑い、激しい頭痛を感じて立ち止まる
体が震えている
破壊衝動のままに行動したら、何かをまた失ってしまうような気がする
―― 一体何を?何を失うというのだろう
…みんな…みんな凍ってしまえ…
そのとき、痛む頭を抑えている手に固い感触があるのに気がついた
大事な人に貰ったトパーズの指輪…明るくて暖かい私のお日様
『大人になっても、三人で一緒にいようね』
この言葉を思い出したとき、彩香の顔に迷いはなかった
ソラがつけてくれた「今の自分の名前」を思い出す
もうあの時の私じゃない
今の私は、あやか
友達から貰った大事なものも増えた
失くしたくない今がある
まるで白昼夢のような今の日常が好き
過去を全て捨てたわけじゃない
でも、今と、これからのことを捨てるつもりもない
だから…
眠りから覚める前からの唯一の持ち物である結晶輪「氷華円」の重さを確かめ、持ち直した
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