港の波打ち際のコンクリートに座り、海の方へ足を投げ出しながら
日が沈んだ暗い海をぼんやりと眺めていた
少し離れた場所では勝利の祝賀会が行われている
…ただ、今は少しだけ、独りになりたかった
「…………」
表情には出ないものの
助けられたかもしれない彼らを助けられなかったことが頭に渦巻く
おそらく、この気持ちは「無力感」だろう
封印される前の記憶と
もしかしたら、という考え
そして何より自分がこれほどまでに弱くなっていること
「…結局…守れない」
力があれば守れるのだろうか
広い視野があれば守れるのだろうか
知識があれば守れるのだろうか
少なくとも無理やり封印の眠りにつかされる前は
力だけあって何もできなかった
…壊すことしかできなかった
「…もう失くしたくない」
せめて、自分の周囲の人たちだけは
静かに深呼吸をする
冬の海の冷たい風が頭と心を冷やしていく
この冷たい風はきっと自分が雪女でなければ体に毒なのだろう
「…ん」
独り頷くと立ち上がって背後の灯りへ歩き出した
(独りじゃない…)
力や過去の記憶と引き換えに手に入れたたくさんの太陽たち
過去の自分が持っていなかったもの
…持っていたけど、失ってしまったもの
それが形を変えて今はある
無表情気味なその表情が少しだけ柔らかくなった
「…ん、頑張る」
手元の詠唱輪を握りなおしてその感触を確かめてからイグニッションカードに仕舞う
(…独りじゃない)
今夜も夢を見たらあの白い馬に遊園地でも用意してあげようか
そう思いながら皆のいる場所へ戻っていった
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