周囲に増えてくる賑やかな飾り
12月には海外の徳の高い方の誕生日を祝う行事があるそうで
それが日本に輸入され、いつしか恋人たちと過ごす祭りとなっている様子
その祭りが近づいているのだな…と、感じさせられる
その直後は初日の出や初詣と行事が続き…
この忙しくも、年に一度の日を誰と過ごすかという問題は
そう無視できないものでもある
「………………」
縁側に座り星を眺める
流石にこの時期は寒く…白くなる呼吸がよりその寒さを視覚に訴えている
(…そういえば私がここにきてもうすぐ2年が経つのですね…)
思えば、私がこの学園にきたのは『大いなる災い』と銀誓館学園との大規模な戦闘の最中でした
部屋に立てかけてある、双子の姉の形見のキーボードを見る
定期的に手入れをしているのでまだ使えるはずだ
「…伊吹…」
部屋に戻りそのキーボードを手に取って鍵盤を押し音を出してみる
早苗自身は姉の形見だからと使っていただけで
特に曲のレパートリーが多い訳でも、演奏が上手な訳でもない
楽譜を覚えた数少ない曲のうち、伊吹が最後に練習していた曲を弾いてみる
友人と演奏するのだと、そう楽しそうに語っていた
(そういえば伊吹がいつも話していた演奏仲間の友人のことを私は何も知りませんね)
何処の誰で、どういう名前なのか全く分からない
そのことに気付いて小さくため息を漏らす
大事な身内の友人のことすら知らないのだ
(…私の世界はなんと小さいのでしょう…)
…伊吹には私と違って夢も目標もあった、これからどんどん世界を広げるはずだった
(…どうして…生き残ったのが私だったのだろう…)
足枷になった罪の意識、守れなかった悔しさ、片割れを失った孤独感
さまざまな思いから涙が流れる
(私なんかを庇ったために、伊吹は死んでしまった)
伊吹の分も、私は生きなければならない
そして理不尽な犠牲を少しでも減らすために行動したい
寂しさを感じる時、そして負けそうなとき
いつも持ち歩いているキーホルダーの人形を手に取り
その手触りを確かめるように感じることで勇気を補充してきた
伊吹が居なければ何も出来ない、しようともしない、…それが私だった
冷静に過去を思い返すほど私は伊吹のおまけであり
伊吹が華やかな太陽なら私は影であり
決して日の当たる存在ではなかった
ならば…今の私の環境は…
(…伊吹が本来得るはずだったものなのかもしれない)
…私は伊吹に近づけるのでしょうか
そして伊吹の変わりを果たせるのでしょうか
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以下、背後の人の独り言
彩香の場合と同様に良い友人に出会えたことで少しずつ矯正されてきています
こんなんですが、矯正されていきてます
少なくとも、戦争などで自分を追い詰めて重傷特攻するようなことはもう無いです
間際になって思い止まってしまうでしょう
(最初期は、思い詰めて重傷出撃しちゃうキャラでした)
早苗さんが抱える黒い部分は、双子の姉に対するいろいろなコンプレックスが原因です
双子の姉である伊吹さんに対して、ものすごく尊敬と憧れを持っていてかなり依存していたので
そんな伊吹が誰かと仲良くなると、嫉妬しながらも自分が捨てられるのではと恐怖していました
伊吹さんが友人を作り早苗さんの知らない時間を作り始めた矢先に襲撃されたという過去なので
亡くなったことではっきり本人から拒否される危機がなくなったという意味で
早苗さんは自覚して無い部分でホッとしている心理もあったりもします
依存してた割に余裕があるのはそのためでもあります
表向きは天然キャラですが、その内側はヤンデレです
もう少し自分を表現するのに慣れてくれば、負の感情を溜め込んで熟成させて病んでしまうこともないのですが…
そこは今後の運命の糸次第ということで
とりあえず現時点で仲良くしてくれる友人が何人もいるのに孤独感を感じるあたりけっこうわがままな子でもあると思います
こういうタイプは自分で距離を置いてるのが原因なのに、自分に自信が無いなどの理由で距離を縮める勇気を持てず
悪循環に陥りやすいタイプでもあります
とにかく、一定以上仲良くなろうとするとめんどくさい子だと思う
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