変わらないこと
変わること
変えたい過去
変えたくない今
変わらない夢
いつもの雪景色の中、ぼんやりと空を見上げる
夢の中の空は薄暗く、星さえも見えない
この世界にあるのは
廃墟となっているどこかの村と
降り積もる雪と―
「まーた考え事か?」
夢の中に捕らえている、ナイトメア
いつもの軽い口調でのそのそと出てきて
「…まあ、最初の頃からはだいぶ明るくなったよな」
そう白い馬が言った
そうなのだろうか
それは良いことなのだろうか
ただ思うことは
今がずっと続けばいいのに、ということだけ
変えたい過去がある
あのとき、すぐに二人でその場を離れていたら
私は彼を失うことはなかったのだろうか
そんな「もしも」を思う
でも変わっていたら
封印の眠りにつくこともなく
今の時代に私がいることもなかったのだろう
そんな変えたくない今がある
目覚めた今は昔の面影はどこにもなくて
あの日歩いた道も
あの日食べた店も
あの日涼んだ川も
みんな変わった
変わらないもの
あの日もらった、この結晶輪と
この夢
この夢は最後の景色だ
私があの時見た最後の景色
これでいい
忘れたくないから
「なあ、ところで前に約束した遊園地をブホァ!?」
馬が空気読まない発言をしたので回し蹴りを浴びせると
馬は身体を半回転させながら地面に倒れ伏した
私にそんな力があるはずもなく
いつもながらこの良いリアクションには感心させられる
「いつもながらいいリアクションね、ボイル」
派手に倒れたボイルという名前の馬へ言い放つとその馬はすばやく起き上がった
「いきなり蹴るなよ!ドS!外道!雪女!」
半泣きで叫ぶ馬へ突っ込みを返す
「…雪女ってそのまんまじゃない」
すると馬がドヤ顔をしたので顎にアッパーを喰らわせてやった
はて、遊園地とは…と思案していると再び復活したボイルが呆れ顔で言った
「…忘れたのか?この前約束しただろ、この殺風景な夢の世界に遊園地を作るって」
「…ああ」
そういえばそんなことを言ったような気がする
「あれは中止」
「なんで!」
「…ここはこのままがいいの」
そう言い再び空を見上げる
夢の世界の空は曇り空でただただ薄暗い
ここはこのままでいい
変えたくないこと
忘れたくないこと
新たに得たことで忘れてしまわないように
失ったことへの戒めとして
忘れないために
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